さて、今月は、第１章のブッフ・ア・ラ・モードに続き、第2章では、この牛肉煮込料理に合う「ワインの話」についてご紹介します。ご寄稿いただいたのはメートル・ド・セルヴィスの会の長谷川純一さんです。レストランの支配人としてだけでなく、ワインスクールの講師としても活躍されている長谷川さん。『マリアージュの法則』や、ワイン選びの「ア・ラ・モード」についても教えていただきました。「ア・ラ・モード」という言葉に、「流行っている」という意味の他にもこのような意味があると知りました。素敵ですね。

▲ブッフ・ア・ラ・モード（Bœuf à la mode）

マリアージュの法則

　コラムをご愛読の皆様、ソムリエの長谷川純一です。長い冬を超えて春が訪れていますね。私の所属する俺のフレンチ・グランメゾンでは生演奏が毎日ございますが、春の曲がレストランの中に響くとお客様の表情も明るくなるように感じます。春を告げる食材「アスパラガス」や「モリーユ」、キーワードで「仔」のつくお肉を召し上がると多くのお客様が旬を感じると共に元気になっていくのを目の当たりにし、食のパワーを改めて実感しております。そこに1杯の美味しいワインがあることで更にその時間を素晴らしいトキにしてくれます。
今日はそんなマリアージュの根本を改めて考えるのに相応しいテーマ「ブッフ・ア・ラ・モード」。

そう私が思うのも、

そもそもこのお料理に【合わないワイン】ってあるのでしょうか？

マリアージュの基本法則では、

1. 　料理とワインの味わいを合わせる

ワインのトレンド"ア・ラ・モード"って？

　ですが、こちらのブブ・ア・ラ・モードは偉大なる料理人達も赤ワインを使う方もいれば白ワインを使う方もいらっしゃったり、フォーティファイドワインを使ったりと様々です。まさに「ア・ラ・モード」流行の名の通りに、作り手や食べ手のトレンドで楽しむことができるマリアージュが良さそうですね。
　今のワインのトレンドといえば、いかがでしょうか？

‣　オーガニック、ビオワイン

　などがキーワードとして挙がるかもしれませんね。こういったトレンドには様々な価値観が存在しますが皆さまのこれらのワインに対する考え方はいかがでしょうか？
せっかくの機会ですからフォーカスしてみましょう。農薬や化学肥料を極力使わない、もしくは全く使用しないようなナチュラルワインと呼ばれるワインも様々なスタイルがございます。分かり易く例えてみると、
「美味しいリンゴを美味しく食べる為に塩水をくぐらせるかどうか？」

塩水をくぐらせると綺麗なリンゴの色が保たれ、その穏やかな塩味がリンゴの甘味や酸味を引き立ててくれます。一方で何も手を加えずそのまま食べた方が本来のリンゴの味わいで美味しいという考え方もあります。でもきっとどちらの考え方もリンゴを美味しく食べる、もしくは食べてもらうために生まれた手法で、どっちも正解なのでしょう。

　ブブ・ア・ラ・モードの郷土はイル・ド・フランスですから、華やかなパリを思い浮かべまさに流行の中心地。様々な考え方と様々な好みが交錯します。この料理に対するマリアージュの答えは、

「お客様の好み」に合わせる

が一人のソムリエとしての私の答え。「ア・ラ・モード」には流行やトレンドという言葉の意味以外に、「流儀」という意味もございます。数々の分析をして料理とワインの完璧なマリアージュを生み出すことはもちろん素晴らしいことですが、一方で常に目の前のお客様に寄り添うマリアージュをご提案することも大切なことだとこの料理を通じて改めて感じました。

　皆さまにとっての料理とワインを楽しむための「自分らしさ」が「ア・ラ・モード」として多くの人たちと共有できたら最高ですね！
Bon Mariage!!　良い春をお過ごしください。

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