レシピの話
フランス地方料理を巡る旅
前回ご紹介したブルターニュ地方のロールキャベツの「バルダッド」。早速試してみたよ、という方がおられたら嬉しいです。ウサギ肉とソーセージ用ひき肉をキャベツの葉で何層にも重ね、大きなキャベツの形にして煮込む「バルダッド」。これに合うお薦めは一体どんなワインでしょう? 今回もメートル・ド・セルヴィスの会の岩佐さんにご寄稿いただきました。クヴェヴリというアンフォラのような土器を使って作られたワインはユネスコの世界無形文化遺産にも登録されている南コーカサスのジョージアの伝統製法なのだそう。一度飲んでみたいです。秋の夜長を、ブルターニュの景色と、野を駆け回るウサギを想像しながら?ワインと共にお楽しみください。
~ 第2章 ~
バルダットのワインの話
岩佐 和(いわさ わたる)さん(学士会館精養軒)
▲バルダット
今回はロールキャベツ!すごく馴染みがあって懐かしいお料理ですが、もう長いこと食べていない...
皆様はいかがでしょう?
私にとっては"Cuisines de Grand-Mere"(ofukuro-no-aji)ですね。豚ひき肉と野菜のファルスがしっかり詰まったキャベツ包みが薄いトマトスープで煮込んであって、だいたい爪楊枝が刺さっている。でも美味しいもんだからご飯もすすむすすむ!はっきりと記憶に残っている香りですね。
さて、この"Bardatte"。
ウサギ肉とソーセージ用挽肉とをキャベツとで層に重ね、包み、ブルターニュ特産のバターと白ワインで結構長くゆっくり煮込んであります。ハーブは気まぐれに、アセゾネもシンプルです。この一皿の旨味のポイントはこの工程から生まれる"cuisson"(キュイッソン)(※1)(煮汁)と言うよりはその凝縮した"Jus"(ジュ)(※2)、そしてぎっしり詰まったお肉を食む時の食感の調和ですね。
今回のおすすめはロゼワインになりました。ロワールのロゼなんて心地よい時間が訪れそう。
でも、今回は南アフリカのロゼワインをどうぞ。
テスタロンガ ラフィネ ロゼ Testalonga Raffiné Rosé
産地:南アフリカ スワートランド
品種:2021年ヴィンテージはシラー100%
(実はサンソーだけで作られることが多いそうです)
南アフリカで自然派ワインのパイオニアとして活躍するワイナリーから独立し、自然と共生をしながらワインを造り続けています。色調は輝く薄いルビー。
チェリーやアセロラが心地よくふくらみ、口中に広がります。
黒ブドウですから渋味を感じますが滑らかでいて、若い苺の様な新鮮な酸味と共に余韻に続きます。
デジュネ(昼食)(※3)に晴れたテラスでわいわいと。食卓も映える!
前述はデジュネ・バージョンでしたから、ディネ・バージョン(夕食)(※4)ならもう1種試してみたい。
テーブルにキャンドル置いてほんの少し暗くして。
"Bardatte"に少しスパイスを効かせて作ってみたとしたら、オレンジワインでもまた別の旨味の相乗をもたらしてくれそうな気がします。
ヴィノ・マルトヴィレ ツォリコウリ Vino Martville Tsolikouri
産地:ジョージア イメレティ
品種:ツォリコウリ100%
西ジョージアで夫婦別々にワイナリーを営んでいるご主人のザザさんがジョージアワイン醸造方法伝統のクヴェヴリ (Qvevri)(※5)を使って作られています。
グラスの中で透き通る琥珀色がテーブル上でこのお料理のシズル感と雰囲気に合います。もちろん料理の味わいにはスパイシーさと煮込む事から生まれる深みがあり、このワイン特有のスモーキーなニュアンスや口中で広がる甘苦系のスパイスと甘やかさ。そしてたおやかな酸味がBardatteと相乗して楽しいひと時を過ごせそうな...
▼ジョージアのクヴェヴリ
今回は自宅でシェフとソムリエを演じながらゲストをもてなしてみました。
屋外や屋内。昼夜や明るさ、お皿や食器にクロスやら香りに音やら、尽きない...
終わりなきクレアシオン(創造)
とりあえず芋名月でも拵えて、今夜は縁側で中秋の名月を愛でよう。
A la table!
※1・・・cuisson 煮汁
※2・・・jus (肉の)煮焼き汁(肉を焼いたり、少量の液体を加えて煮た後にできる液体で、そのまま、少しに詰めたもの、またとろみをつけられたものはその料理のソースとして用いられる)
※3・・・déjeuner 昼食(フランス革命前までは断食jeûneを破ること、すなわり夜の間の断食の後で、一日の最初の食事をとることを意味してたいたため、朝食を指していたが、今では昼食をさす)
※4・・・dîner 夕食、晩餐、正餐
※5・・・クヴェヴリ 伝統的なジョージアワインの発酵、貯蔵、熟成に使われる大きな土器のこと。ジョージアの土を使い、窯で焼き上げられた素焼きの壺/甕。取っ手のない大きな卵形のアンフォラに似ており、地下に埋められているか、大規模なワインセラーの床下に設置されている。クヴェヴリの大きさは様々で、容量は20リットルのものから約10,000リットルのものまであり、800リットルが代表的なサイズ。クヴェヴリを使った製法は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された。 ジョージアワインについてはナショナル・ワイン・エージェンシー・ジョージアの日本公式ページもご参考に。
▲Chapelle de Languidou/ラングイドゥ礼拝堂 ブルターニュの大西洋に面した町、プロヴァンにある。13世紀に立てられ、現在は廃墟に。ケルトキリスト教の影響が強い地域だそう。
▲魅力的な景色に溢れるブルターニュ。ゴーギャンなど美しい村の景観は多くの芸術家を魅了した。
▲神秘的な自然が一番残るといわれるブルターニュ
寄稿者:メートル・ド・セルヴィスの会 岩佐 和(いわさ わたる)
学士会館精養軒 フランス料理 ラタン
マネージャー ソムリエ
メートル・ド・セルヴィスの会 幹事
APGF 2019年 第18回メートル・ド・セルヴィス杯 準優勝
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