活動の軌跡

開催報告

【フランス料理編】 横浜ガストロノミ協議会シェフによる対面型セミナー 野田 一寿氏「Salade niçoise à ma façon」ほか

「料理とワイン、サービスで夏の売上アップ!」
~南フランスと横浜 旅するレシピ~

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Salade niçoise à ma façon

第五回を数える横浜ガストロノミー協議会(以下YG)シェフによる料理セミナー。前回までのオンラインセミナーから装いも新たに、初の試みとしてお客さまを会場にお招きして「来館方式」の開催となりました。

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野田 一寿シェフと奥さまの植物料理家きみえさん

料理実演の講師は、YGメンバーでフレンチ料理店「Hitotsu -ひとつ-」のオーナーシェフ・野田 一寿氏です。加えて木下インターナショナル ソムリエ 平賀氏による「南仏料理とワインのマリアージュ」、YG所属の各シェフたちの「リアル レストラントーク」など、実戦的な内容となりました。

≪第一部 料理実演とペアリングワイン≫

● Salade niçoise à ma façon  「ニース風サラダ ア・マ・ファソン」(自分流で)(写真)

2_2salade.JPG一品目は野田シェフが独立開業前に滞在した南仏「ニース」の郷土料理「ニース風サラダ」を、シェフならではのセンスで「ア・マ・ファソン」(自分流で)した一皿でした。ちなみに当日サポートしていただいた素敵な奥様と出会ったのも「ニース」だそう。

現代の「ニース風サラダ」は通常、トマト・さやいんげん・ゆでジャガイモ・ツナ・ゆで卵・オリーブの材料ににんにくとオリーブオイルの香り、アンチョビの塩味とで構成されるお料理ですが、そこは「センスの料理人野田シェフ」。ポイントはおさえつつも、サスティナブルな取り組みの一環として、三崎恵水産のフレッシュなびんちょう鮪をチョイス。

マグロは現在、絶滅危惧に瀕しており、その要因は乱獲と言われています。自然のサイクルに則した適切な漁獲を行うことが、今後に向けた持続可能な活動につながっていきますが、三崎恵水産はサスティナブルな取り組みを積極的にされている卸会社のひとつ。今回、野田シェフがびんちょう鮪を選んだのには、「サスティナブルな取り組みをしている業者から仕入れること」や「料理を通して、今の現状を知ってもらうきっかけにしたい」というシェフの思いが込められています。

このびんちょう鮪に低温調理の技法で南仏の香りをまとわせてから、バルサミコ酢・お醤油・はちみつを煮詰めたソースを表面に塗ったり、タップナードを乾燥させたパウダーとルイユソースで南仏を表現したりと、惜しみなくテクニックを駆使してシェフならではの「ニース風サラダ」を作っていただきました。

20220803-38W300cut2.jpgお料理に合わせてソムリエの平賀氏(写真)が提案したのが、シャトー酒折ワイナリーの白ワイン 「甲州樽熟成 i-vines vineyard」。

"南仏料理にはロゼ"という方程式をあえてチェンジした、平賀氏ならではの豊富な知識と経験に裏付けされたチョイスでした。

お料理とワインのマリアージュを試されたお客さま方も大きく頷かれていました。

● Daube de bœuf à la niçoise 「牛肉のドーブ(煮込み) ニース風」(写真)
二品目はこちらも南仏スタイルの煮込み料理「牛肉のドーブ ニース風」です。フランスのそれぞれの土地で材料に多少の違いがありますが、昔から長く人々に親しまれている郷土料理です。南仏スタイルではオレンジやオリーブ・さまざまなハーブが加わるのが特長です。

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野田シェフはオーソドックスなレシピを踏襲しつつも、赤ワインをたっぷりと使い贅沢で濃厚な「ドーブ」を丁寧に何段階も牛肉や煮汁の状態を紹介しながらデモンストレーションしていただきました。素材の牛肉も地元神奈川県産の「やまゆり牛」を使用し、地産地消の取り組みのお話もしていただきました。

1_wine.JPGこのお料理にソムリエの平賀氏が合わせたのが「ドメーヌ サラダン トラララ! ロゼ」(写真)

王道のロゼワインですが、こちらもローヌ地方のロゼを持ってくるあたりが彼ならではの演出。

上品で綺麗なピンク色のワインが驚くほど「ドーブ」にマッチしていました。

試食、試飲されたお客さまも大満足なセミナーとなりました。

後日動画も配信しますのでお楽しみに!

≪第二部 シェフのインタビュー≫

試食が終わって、野田シェフへのインタビューが始まりました。

IMG_5635.JPGQお店の立ち上げ時に考えていたことは?

「南仏の滞在経験を活かして、そこを意識したレストランを開きましたが、運営していくうちに、次第に『フランス料理の中に、この地(日本)でしか作れないフランス料理を意識する』という方向に変わっていきました。」

Qオープン当初から変わったことは?

w1000 monaka.jpg「変わったことは僕が『シェフになったこと』です。最初は支配人、サービスマンで、料理人ではありませんでした。しかし途中から自らシェフとして料理するように。千利休の"自ら作って自らもてなす"のようですが、実際には自ら作りもてなすからこそ心配もあります。でもそれが、美味しく食べてもらえているかな? 楽しくお食事できているかな? と、料理人出身じゃないからこそ真摯に向き合うことができている理由だと思っています。それが今となっては自分の強みだと思っていて、地道に確認しながら取組み続けることでちょっと自信につながっています。」

Q「幸せの生まれる場所であるように」とは?

「ウェブサイトにある『幸せの生まれる場所であるように』はレストランのコンセプトです。外食にネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃると思うので、帰るときに『外食した、良い事したな、今日は幸せな良い一日だったな』と笑顔で帰れるように願って料理を提供しています。」

(写真は野田シェフのレストランとそのお料理です)

続いてYGメンバーのシェフたちにインタビューです。
皆さん自分のお店を運営していますので、全てリアルな体験談です。

Q夏の売上アップ術は?
2-6.JPG「コロナによるキャンセルがあるのが残念ですが、季節を感じられるメニューでお迎えしています。夏なら南イタリア、ナポリ、シチリア辺りのものに、和の食材を入れてオリジナルの一品を。たとえば「冷製のカッペリーニ」、オマールエビと桃を組み合わせていて好評です。

夏野菜は彩りが良いので食欲が湧きますし、味覚としては酸味が好まれるので、レモンやビネガーなどもよく使います。」
--「インターナショナルキュイジーヌ サブゼロ」大井務シェフ(写真)

Qサステナブルな取り組みをしていますか?
2-7.JPG「煮込みなどで濾して残ったワインも再利用したり、農作物の仕入れを現地農家と直接取引したり、最近はテイクアウトが人気なので容器をリサイクル可能なものにしたり、ストローを紙製のものにしたりと、多方面から取り組んでいます。」
--「ビストロ酒場Marine Club」竹田直人シェフ(写真)

Q人材育成はどう考えていますか?
2-8.JPG「飲食店で一番難しい問題かもしれません。広告で応募してきた人は辞めてしまうことも多く苦労しました。そこで『まず一人、しっかりした人を育てよう』と考え、調理師学校を出た人を採用して一生懸命教えて育てました。

すると、先輩を追いかけて後輩が入ってきたり、その学校の先生とも良好な関係が築け、研修で熱心な生徒を送ってくれたりしました。研修だと一か月ぐらい生徒の仕事ぶりが見られるのでより判断しやすくなります。そうやって、スタッフに恵まれ、育ってきました。

そしてこの秋、もう一店舗、東京に店を出すことになりました。2番手のシェフにその店を任せますが、みなのやる気にもつながっていると感じます。」
--「シェ・フルール横濱」飯笹光男シェフ(写真)

Qずばり、リピートの秘訣とは?
2-9.JPG「私が思っているのは『お客さまの心の中に<行きたいお店リスト>がある』ということ。そこには3つの検索項目があります。
①ジャンル(イタリアン、日本食など)
②用途・目的別(接待、記念日など)
③新規開拓候補店(行ってみたい、遠のいていたけど再来店したいなど)

このリストに載るかは『レストランの料理、質、サービス』は勿論のこと、『お店の特徴』も大事です。たとえばうちのレストランでは、生きたうなぎやオコゼをお持ちして選んでいただくと、その場が非常に盛り上がります。特別なとき、楽しい時間を過ごしていただくのです。80年間続く店ですが、ある日そのリストに載らなくなるかもしれない、と考えると毎日が初心の気持ちで取り組まなくてないけません。リストに載り続けるように、毎回精一杯やることを心がけています。」
--「日本料理 梅林」山下 英児料理長(写真)

Qオーナーシェフという職業とは?
2-10.JPG「料理人だと『原価率』だけ気にすることが多いですが、私は修業時代に支配人も経験していたので『人件費』や『家賃』などの全体費用を見てきました。一日の売上に一喜一憂せず、月の流れで見ていくことが重要です。料理人だとつい自分の作りたい料理が先行しがちですが、お客さまのニーズを捉えることも大切です。

オーナーシェフとしては、お客さま人数が見込めないときは思い切って休んだり、来月はちょっとお客さま還元的に贅沢な食材を使ってみようとか、そういうハンドリングができるのが良いと思っています。」
--「ペタル・ドゥ・サクラ」難波秀行シェフ(写真)

≪参加者から≫
5_IMG_2503.JPGセミナーは大変ご満足いただけたようで、数多くの嬉しい感想をいただきました。

「店舗の違うシェフ達が集まり、飲食の為に色々と仕掛けて頂いている事に感銘を受けました。」

「マグロの絶滅危惧に関するお話、サステナビリティや地産地消などにも配慮した材料選びに大変感銘を受け、料理は味はもちろん、その背景や作る人の思いが大切だと感じました。」

「おひとりのかただけではなく、たくさんのシェフからのお話をお伺いすることが出来、有意義な時間になりました。お料理やワインの組み合わせ新しい発見があり、とても楽しい時間でした」など、ご協力ありがとうございました。

2時間があっという間のセミナーでした。ご参加いただいた皆さま、前日午前3時までご準備いただいた野田シェフ、ロゼワインの世界を広げてくださったソムリエの平賀さま、そして勉強熱心で仲間想いの横浜ガストロノミ協議会のシェフの皆さま、どうもありがとうございました!

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写真は、舞台裏で試食の盛り付けの様子と
「ネスレネスプレッソ株式会社」提供のアイスコーヒー
「タカナシ乳業株式会社」提供の牛乳・サワークリーム


「NPO 法人横浜ガストロノミ協議会」(YG)
横浜市民や国内外から横浜を訪れる人々に対して、食を通じて豊かな食文化を持つ街「横浜」の国内外へのピーアール、食育活動、次世代の食の担い手の育成などを行っています。シェフ、パティシエ、ソムリエ、バーテンダーなどが参加しています。


8_chef.JPG講師 野田 一寿氏(レストラン「Hitotsu」オーナーシェフ)

1981年生、横浜市出身。
学生時代に飲食業の魅力にとりつかれ、フレンチ、イタリアンの店でサービスマン、マネージャーとして経験を積んだ後、フランスのニースに留学。
南仏の穏やかで温かいおもてなしと身体に優しい料理に感銘を受け、2012年【 Brasserie Amour 】を開業。
日本人としてフランス料理との向き合い方を意識し、2019年日本の和と西洋の融合をテーマにしたレストラン「Hitotsu -ひとつ-」をオープン。
                
「Hitotsu」( JR東海道線・横浜市営地下鉄ブルーライン「戸塚駅」から徒歩3分)

9_somurier.JPGソムリエ 平賀祐一氏(木下インターナショナル株式会社)

筑波大学卒業。
ビストロ・ジュイエー(ソムリエ資格取得)、キョウ・ヌーヴォ(マネージャー・ソムリエ)、ブルーノート東京(フロアチーフ・ソムリエ)、アンド・エクレ(ソムリエ)、レゾナンス(ソムリエ)、エミュ(マネージャー・ソムリエ)等を経て、2020年木下インターナショナルに入社、現在に至る。
木下インターナショナル株式会社 (洋酒輸入販売商社)
〒104-0042 東京都中央区入船2丁目2-14 U-AXIS 6F
Tel 03-3553-0721
Fax 03-3553-0993

(2022/8/3セミナー開催。2022/8/16開催報告UP)

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