活動の軌跡
開催報告
開催報告 『新解釈!パリッと焼いたフロマージュ・ド・テット』
人気フランス料理店のシェフの会「クラブ アトラス」の特別協力のもと「フレンチレストラン メイ」の岩田 充弘シェフを講師に迎え、料理実演セミナーを開催しました。他のシェフからのコメントや、フランス修業、レストラン運営について等、興味深い話をいろいろ伺いました。まずはお料理について紹介します。
◆新解釈!パリっと焼いたフロマージュ・ド・テット(試食/写真上)
パリで修業した店舗「ル・グラン・ヴェフール(Le Grand Vefour)」で、ギィ・マルタンシェフ(Guy Martin)に豚の頭部を使った温製前菜料理を提案し、レストランのメニューに採用された岩田シェフ。当時はレストランのスタイルに合わせモダンな料理に仕上げて提供していたそう。そんな思い出の食材と、フランス伝統料理の「フロマージュ・ド・テット(Fromage de tête)」に着想を得て生まれたのが今回の一品です。通常は冷製で供する「フロマージュ・ド・テット」を、たっぷりのゼラチン質で冷え固まったテリーヌの両面をしっかり焼き、きゅうりや茗荷、ハーブサラダを上にのせ、酸味のあるラビゴットソースを添えます。元々は、一口サイズに切り、冷凍したフロマージュ・ド・テットをクロケット(コロッケ)にしていたが、揚げずにさらに美味しさを引き立てたく、編み出した料理とのこと。試食された参加者やクラブ アトラスのシェフからも「初めて見た調理法で美味しい」と大変好評でした。
◆ホワイトアスパラガスとアオリイカの温かい前菜~空豆のソースをかけて~(写真上)
岩田シェフの「レストラン メイ」開店8周年記念コースメニューの中から一品をご披露いただきました。いかに「ホワイトアスパラガス」を美味しく食べていただくかを考え、茹で方や素材の組み合わせを工夫したとのこと。緑鮮やかな空豆とグリンピースのクーリ、少量の醤油で香ばしく炙ったイカゲソとイカそうめん、イカ墨を使った美しい葉型のチュイルが添えられ、春の食材が織りなす絶妙な味のバランスで、見た目も美しいホワイトアスパラガスの一皿でした。岩田シェフは、野菜を茹でる時の塩分濃度を厳密にコントロールされており、根菜、豆類、葉物や緑野菜等、素材によって調整しているそう。色止めの氷水にも塩を効かせる徹底ぶりで、今回もホワイトアスパラガス、空豆、グリーンピースもそれぞれ塩分濃度を変えての調理でした。参加者からも勉強になったとの声が寄せられました。
▲「ストラスヴァリウス」小山英勝シェフから試食の感想をいただきました
セミナー後半は、岩田シェフにお店の話をうかがいました。
◆「クラシック」と「モダン」
岩田シェフは、日本で経験を積んだ後、30才でフランスへ。前半は星付きの「モダン」レストランで最先端な料理を学び、後半は食べ歩いた中で、一番火入れが完璧で美味しかったというパリの人気ビストロを修行先にセレクト。ジビエやパテ・アンクルートなど伝統料理など「クラシック」な料理をここで学びます。この経験が今のレストランのコンセプト「クラシック」と「モダン」の融合につながっているのだそう。
◆わざわざ来る価値のある店
五反田にある「レストラン メイ」は今年8周年を迎えました。飲食店も多い激戦区で当初は低価格のランチも含め複数のコース価格を設定したが、あまりの忙しさにコース数を減らし、8年の間に価格設定・コース構成を変えてきたそうです。料理が美味しいのは勿論で、お客さまには来店して、食べて「楽しい!」と感じていただけるお店にしたいとのシェフの強い思いがあります。それこそが「わざわざ来る価値のある店」と考え、日々レストラン運営をされています。若手スタッフの育成にも力を注いだりと、レストラン全体を支える底力にも厚みがあります。
クラブ アトラスのシェフメンバーからもお店の近況や運営についてお話いただきました。
【コロナ禍でランチに変化】
「コロナ禍でディナーのお客さまが以前ほど奮わなくなり、反対にランチを楽しむ方が増えた。少しずつメニューを変え、単価も上げてきたが上手くいっている。お客さま層も変わってきて、ディナーの凹みを埋めるほどになった。」
というお話がある一方、「現在の物価高の影響で、10年以上価格を上げてないランチの値段を上げるか、こらえるか...。今が考えどきだ」というシェフの意見もありました。
▲「ラフィナージュ」高良康之シェフが参加者の質問に答えました
【みんなで楽しむフレンチ】
「高級フレンチ店はお子さまにご遠慮いただいたり、年齢制限をしているところも多いが、私のお店では月に一回キッズウェルカムデーを設けていて好評です。」このような取り組みは多くのお店で行われるようになっているようですね。
【顧客にリピーターになってもらうには】
「ブレないということ。私の料理はクラシカルなフレンチです。お客さまもそれを期待して来てくださる。料理にも流行りものがあるが、やはり自分の料理をブレずに創っていくことと、そしてサービスが大事です。私の店は、来てくださった方が全員リピーターという日もあり、継続していく大切さを感じています。」もう20年を迎えるというお店を運営するシェフの言葉に、会場にいる誰もが頷いていました。
▲「ルメルシマン・オカモト」岡本英樹シェフが盛り付けをお手伝い
フランス料理を美味しくするための工夫や挑戦、店舗の運営、お客さまとの関係の築き方、どれも含蓄のある話が飛び出して良いセミナーになりました。講師の岩田シェフ、クラブ アトラスのシェフの皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
※トップ集合写真 左から順に『レストランメイ』飯塚弘志朗さん、近藤祥平さん、『ペタル ドゥ サクラ』難波秀行シェフ、『シェ・フルール横濱』飯笹光男シェフ、『レストランメイ』岩田充弘シェフ、『ルメルシマン・オカモト』岡本英樹シェフ、『ストラスヴァリウス』小山英勝シェフ、『ラフィナージュ』高良康之シェフ
※クラブ・アトラス ( CLUB ATLUS)
フランス料理に携わる役職者、管理的立場を有する者が集まり、
次世代へ料理技術指導、情報共有をし、フランス料理を継承していくことを目的とする会
(会長:「ラフィナージュ」オーナーシェフ 高良 康之氏)
http://club-atlas.jp/about.html
*「レストラン メイ」オーナーシェフ
* クラブアトラス理事 神奈川県出身。18歳から富士屋ホテルにて修業。その後、恵比寿のミシュラン1つ星レストラン「モナリザ」でスーシェフを務めた後渡仏し、2つ星レストラン「グラン・ヴェフール(パリ)」、ネオビストロ「ルペール ドゥ カルトーシュ(パリ)」などで研鑽を積む。その後、「モナリザ」に戻り、2013年までシェフを務める。 2014年5月に「レストラン メイ」をオープン。現地での経験を活かしたフランスクラシック料理に、自身の考えるコンテンポラリー(現代的)なエッセンスを取り込み、しっかりとした味ながらも「軽さ・ポーション・バランス・香り」を中心に考え、和食材を積極的に使った、現代人・日本人に親しみやすい新たなフランスクラシック料理を目指す。 「レストラン メイ」http://www.may-iwata.jp/index.html |