活動の軌跡
開催報告
東京ガス ✖ FFCCアミティエ・グルマンド特別企画
清水シェフが伝えたい一皿
『 仔鴨のルーアン風 Canard à la Rouennaise 』
~フランス料理の伝統と継承~
▲左から順に『ルヴェソンヴェール』武田明憲氏、『ルメルシマン・オカモト』岡本英樹シェフ、『レストランリューズ』飯塚隆太シェフ、『シェ・シミズ』清水郁夫シェフ、下野隆祥氏(メートル・カナルディエ/武蔵野調理師専門学校講師)、野口怜奈氏(メートル・カナルディエ)、『ルヴェソンヴェール』伊藤文彰シェフ、『ストラスヴァリウス』小山英勝シェフ
ご好評を博した2021年7月のクラブアトラス セミナー開催に続き、今年度2度目となる「クラブ アトラスのシェフによるオンライン料理セミナー」を開催しました。
今回、講師を務めていただくのは「シェ・シミズ」のオーナーシェフ 清水 郁夫 氏。フランス ノルマンディ地方発祥の伝統料理で、フランス料理の芸術とも言われる「仔鴨のルーアン風 Caneton à la Rouennaise(カヌトン・ア・ラ・ルアネーズ)」をご披露いただきました。多くの方にこの料理を知っていただきたいという清水シェフの思いが込められています。
窒息鴨をローストし、客前で、胸肉やモモ肉を切り取り、プレスカナールという特別なプレスマシーンを用い、ガラから絞り出したエキスをソースに加えて仕上げます。調理場のシェフとレストランフロアのサービス担当が連携して仕上げる点も見所の一つで、この技術を習得し、認定試験に合格すると「メートル・カナルディエ」に認定されるという国際認定資格もある程。
調理場側に清水シェフ、サービス側には数々の国内外のグランメゾンで支配人を歴任された下野 隆祥 氏が今回特別にゲストとして参加下さった。
▲サービスと調理との連携によって仕上げられた「仔鴨のルーアン風」
▲プレスカナールというプレス器を使い、鴨のガラからエキスを絞り出しす。エキスはソースに用いる。
▲もも肉はシェフにより厨房で火入れを行い、マスタードとパン粉を付けてこんがり焼き、ヴィネガーの効いたさっぱりしたサラダと共に盛り付けられる。一皿目の胸肉のサービスの後に厨房から二皿目としてお客さまに出される。
▲調理にあたる清水シェフ。鴨をオーブンでレアに焼き上げ、サービスに渡します。ソースはルーアン風フォンに鴨の心臓とレバーを加えて準備。隣のサービスの進み具合を見ながら調理を進めます。
▲メートル・カナルディエの認定試験に合格した人に与えられるメダル。サービス部門と料理部門があり、制限時間内に美味しく美しく仕上げる技術が求められる。
▲絞り出したエキスを加えてソースの仕上げを行う。シェフが作るフォン・ド・カナールの味見は必須。これにより客前でソースの味の調整を行う。
▲レシピにはCaneton (仔鴨)とありましたが、当日はクラブアトラスの伊藤シェフの推薦で京都産の合鴨「七谷鴨(ななたにかも)」を使用。一羽4kgもある大物で、かるく4人前は取れる肉付きです。肌はきれいに整えられいて、ビカビカに輝いている状態。見るからに健康で新鮮だとわかります。
下野先生のサービス技術も素晴らしく、現代のフランスや日本のフランス料理レストランでもなかなか見ることができない貴重な体験となりました。サービスが客前で調理の仕上げをする際には素手で食材を触らないことと、ナイフの柄だけを持って刃には触れないことが衛生的で美しいサービスのポイントと下野氏。
「仔鴨のルーアン風」の起源
フランス料理で有名な鴨料理といえば「鴨のオレンジソース」などが挙げられますが、ノルマンディ地方のルーアンでは古くから「仔鴨のルーアン風」が伝わっています。街の中心をセーヌ河が流れ、右岸と左岸を結ぶ渡し舟があり、かつて農家の人々は鴨を乗せて河を渡り、朝市が開かれる対岸の市場に運んでおり、鴨は生きた状態で売買されていました。ところが鴨が荷物の下敷きになり息を詰まらせ死んでいまい、売る価値がなくなった鴨でしたが、あるシェフが、窒息して肉に血が回っている鴨を軽くローストし、ガラから血を絞りソースに加えてとろみをつける新しい調理方法で評判になったのが起源と言われています。
清水シェフからはプレスカナールの器材が無い場合は、漉し器と麺棒などで押しながら絞り出すと良いことや、付け合わせの料理は自由にその季節に応じたもので良いなどアドバイスもあり、ぜひ気軽に取り入れてみて欲しいとのことでした。
▲試食と食レポを担当くださったのは「レストランリューズ」の飯塚隆太シェフ
この日の試食はクラブアトラスのメンバーシェフ 飯塚 隆太 氏(レストランリューズ)にご担当いただき、味や感想を伝えていただきました。試食された飯塚シェフからの「ソース・ルアネースの仕上げにどうしてレモン汁を加えるのか」の質問には、ワインの酸味だけでなく、レモン汁の酸味を加えることで重くなりがちなソースを軽やかにするためとのことなどが伝えられました。
セミナーの最後には「クラブ アトラス」メンバーシェフより、お店の近況や、新しく加わったクラブアトラスのメンバーのご紹介。また、この日発売になったクラブアトラスのDVDなどの活動についてのお話しや、同じ業界で働く参加者の皆さまへのメッセージを発信していただきました。
クラブ・アトラス ( CLUB ATLUS)とは?
フランス料理に携わる役職者、管理的立場を有する者が集まり、
次世代へ料理技術指導、情報共有をし、フランス料理を継承していくことを目的とする会
(会長:「ラフィナージュ」オーナーシェフ 高良 康之氏)
http://club-atlas.jp/about.html
※カナルディエ協会とは?
「カナルディエ協会」フランス ルーアンに本部をおく、伝統的なフランス料理「ルーアン風仔鴨料理」を芸術として擁護することを目的とした団体
https://www.ordredescanardiers.fr/en
■ 講師紹介 ■
1957年、京都府生まれ
1980年代に渡仏し、名店「ル・グラン・ヴェフェール」で研鑽。
帰国後、国内のフランス料理の名店にて料理長として腕を振るう。
1990年よりフランス料理文化センターの講師を務める。
2000年ブルーノート東京の総料理長に着任。
その後、数々のフレンチレストランのメニューを監修。
2018年6月6日、奥沢に自分の名前をつけたお店をオープン。
シェ・シミズ
奥沢にあるカウンターフレンチレストラン。
食材のちからを最大限に引き出し、たくさんの想いを込めて仕上げたひと皿を四季とともに感じていただきたいとシェフ。
本格的なフレンチが気軽に楽しめる。
158-0083
東京都世田谷区奥沢3-36-11 キャッスル奥沢1F
(東急東横線・大井町線 自由が丘駅より徒歩10分、奥沢駅より徒歩3分)
https://chez-shimizu.jp/
武蔵野調理師専門学校 講師
メートル・ド・セルヴィス杯名誉審査委員長
国内外のグランメゾンで支配人を歴任
FFCCの元サービス専任講師
著書に「世界一のサービス 十年前のお客様を忘れない 」(PHP新書)がある
最後に&感想今回の「クラブ・アトラスのシェフによるオンラインセミナー」では、クラシックなフランス料理のサービス(グラン・メゾンで行われる調理場からサービスへの流れ)を多くの方に知っていただきたいという清水シェフの思いをのせて、ルーアンの伝統料理である「Caneton à la Rouennaise」をテーマにお送りしました。 調理場側に清水シェフ、サービス側には数々の国内外のグランメゾンで支配人を歴任された下野先生という長年のご友人同志で気心の知れた、共にメートル・カナエルディエでもあるお二人の競演となりました。 レシピにはCaneton (仔鴨)とありましたが、当日は伊藤シェフの推薦で京都産の合鴨「ななたに鴨」を使用。一羽4kgもある大物で、かるく4人前は取れる肉付きです。肌はきれいに整えられいて、ビデした内臓も大きく、ビカビカに輝いている状態。見るからに健康で新鮮だとわかります。 清水シェフが下準備で鴨の内臓をビデする際、肺を取り出していなかったのが気になり、質問してみました。シェフ曰く、ガラと肺の間に血液だまりがあるので、肺付きでカナール・プレスにかけるとエキスがたっぷり出るのだそうです。 下野先生のサービス技術も素晴らしく、なかなか現代のフランスや日本のフランス料理レストランでも見られない貴重な体験となりました。 セミナー終了後、クラブ・アトラスのシェフの方々と出来上がった「Caneton à la Rouennaise」を味見してみました。試食担当の飯塚シェフが仰っていた通り、ソース・ルアネースの仕上げに加えたレモン汁がポイントとなり、重くなりがちなソースを軽やかな酸味で包んだような赤ワインが飲みたくなる美味しい一皿でしたし、塩味もばっちりでした。 (厨BO!シェフ) |
今後もクラブアトラスとコラボしたセミナーを開催していく予定です。皆様のまたのご参加をお待ちしております。どうぞお楽しみに。
■ 講習会概要 ■
開催日 | 2022年 1月24日(月)15 ~17 時 |
講 師 | 清水 郁夫 孝 氏(しみず いくお) 「シェ・シミズ」オーナーシェフ クラブアトラス 会員 |
スペシャルゲスト | 下野 隆祥 氏(しもや たかあき) 武蔵野調理師専門学校 講師 メートル・ド・セルヴィス杯名誉審査委員長 / FFCCの元サービス専任講師 著書「世界一のサービス 十年前のお客様を忘れない 」(PHP新書) |
内容 | 調理実演「仔鴨のルーアン風 Canard à la Rouennaise」 お店づくりについて |
主催 | 東京ガス株式会社 / FFCCアミティエ・グルマンド |
企画 |
厨BO!YOKOHAMA / フランス料理文化センター |
特別協力 |
クラブアトラス |
食材協力 |
マイユ( maille )、クリスマス・アイランド21株式会社「クリスマス島の塩」 |
動画撮影会場 |
東京ガス業務用テストキッチン「厨BO!YOKOHAMA」 |